制作会社向けNDAとドメイン管理の実務ポイント
目次
この記事でわかること
- 制作会社がクライアントのドメイン管理を引き受ける際に NDA で抑えるべき 5 条項
- 認証情報の取り扱いで実務的に守るべきルール
- 解約時のアカウント引き継ぎを揉めずに進める準備
なぜドメイン管理は NDA を結ぶべきか
クライアント案件で制作会社がドメイン関連を扱う場合、扱う情報は通常の制作物より 機密性が高いものです。具体的には:
- レジストラのアカウント ID / パスワード
- DNS 管理画面のログイン情報
- メール送信設定(SPF / DKIM の鍵)
- WHOIS 連絡先(個人情報を含む場合あり)
- クライアントのメール送信実態(BCC 経由でビジネス情報が漏れる可能性)
これらが漏れた場合、サイト改ざん、なりすましメール送信、メール内容の傍受といった重大事故につながります。通常の Web 制作 NDA だけでは射程が不足することが多いので、ドメイン管理向けの上乗せ条項が必要です。
NDA に盛り込むべき 5 条項
1. アクセス情報の取り扱いと保管方法
「レジストラ・DNS 管理画面・メール基盤の認証情報を、業務上必要な範囲で取得し、業務終了後は速やかに変更・削除する」ことを明記。
具体的な保管方法も契約書か運用ルール文書に書き、
- パスワードマネージャー(1Password / Bitwarden 等)で管理
- 平文メール送信は禁止
- 共有時はワンタイム URL 経由
を必須にします。
2. 第三者開示の制限
下請けや外部協力者に情報を渡す場合、事前にクライアントの書面同意を取る条項。これがないと、制作会社が下請けに丸投げしたときの漏洩リスクが残ります。
下請け活用時の責任分界はディレクターの下請け活用で詳しく扱っています。
3. データ保管期間と廃棄
業務終了後、預かった認証情報や DNS 設定スクリーンショット等を 30 日以内に削除するルールを明記。
WHOIS 情報の控えなど、個人情報保護法上の取り扱いも意識した運用にします。
4. 漏洩発生時の通知義務
万一の漏洩発生時に、
- 24 時間以内にクライアントへ通知
- 影響範囲の特定と是正措置
- 当局への通知が必要な場合の協力義務
を明記。これは個人情報保護法・GDPR 等の法定通知義務とも整合性を取ります。
5. 解約時のアカウント引き継ぎ
最も重要な条項。解約時に、すべての認証情報をクライアントに移譲することを明文化。
- レジストラアカウントの所有権移転(または新規 ID 作成支援)
- DNS 管理画面からの旧担当者の削除
- 引き継ぎ書のフォーマットと納品期限
ここを曖昧にしておくと、解約時に「過去の制作会社と連絡が取れずドメインがロックされた」事故が起きます。
認証情報の取り扱いルール
NDA とセットで、社内向けの運用ルールも整備します。
受領時
- クライアントから直接受け取る(過去業者経由は避ける)
- 必ずパスワードマネージャー登録、平文残置禁止
- 関係者リストを定義し、メンバー以外はアクセス不可
保管時
- 端末紛失時の遠隔削除設定
- パスワードの定期ローテーション(年 1 回)
- アクセスログの保存(誰がいつ見たか)
業務終了後
- パスワード変更を クライアント立会いで実施
- 自社側の保存を全件削除
- 削除完了報告書をクライアントに送付
解約時のアカウント引き継ぎを揉めずに進める
引き継ぎでよくあるトラブルは、
- レジストラのアカウントが「制作会社所有」のまま、解約時に移譲手続きがない
- WHOIS 情報が制作会社の住所・メアドのまま
- DNS 管理画面の「請求先メアド」が制作会社のまま
を放置することから起きます。詳しくは制作会社のドメイン引き継ぎ実務も参考になります。
防ぐには、契約開始時から「クライアント名義のアカウント」で運用するのが最も確実です。レジストラの「権限委譲」機能を使い、クライアント所有のアカウントに制作会社メンバーをサブユーザーとして招待する形で運用しましょう。
まとめ
- ドメイン管理は機密性が高く、通常の制作 NDA に アクセス情報・第三者開示制限・廃棄・通知義務・解約時引き継ぎの 5 条項を上乗せする
- 認証情報の保管・受領・廃棄を運用ルールで明文化
- 契約開始時からクライアント名義で運用し、解約時の揉めごとを未然に防ぐ
専門家に切り出す選択肢
制作会社で NDA 雛形や運用ルール整備を独自に進めるのは負荷が大きい場合は、ドメイン管理を専門業者に下請けに出す形で、専門業者側の NDA 雛形を流用する選択肢もあります。詳しくは制作会社さま向けサービスをご覧ください。
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